泉田宥美治療院 の日記
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今でも考えてしまう事
2013.09.20
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私がプロボクサーだった頃の話。
6回戦に上がった頃、怪我の為、1年ほどブランクがあった。
その頃、マネージャーから1人の青年を見るように言われた。
A君はプロを目指していて、数か月後にプロテストを受ける予定だった。
私より2歳ほど年下の子だった。
私はA君の練習を見守り、気が付いた事をアドバイスしたりしていた。
トレーナーになって気が付いたんだけど、自分が疑問に思っている事を、その子にアドバイスしている自分が答えを言っている時があった。
練習している時とは違う目線で見ることは、すごく勉強になった。
何故、こういう動きをしなければならないか?
何故、こうしなければならないか?
それを考えて、伝えようとする。
それはイコール自分に対する答えでもあった。
最初、練習ができないことをストレスに感じていたけれど、段々、トレーナーをするおもしろさにも引き込まれていった。
そして、その子がプロテストを受けるのに必要なCT検査を受けた。
そこで思いもよらない事が起こった。
マネージャーから呼ばれ、ある事実を伝えられた。
「A君はプロテストを受けられない」
CT検査の結果、脳に影が見つかったとの事。
生まれつきなのかどうかは分からない。
とにかく、プロテストを受けられない事だけは動かしようのない事実だった。
これまでのA君の頑張りようを間近で見ていただけに、A君のことを思うと言葉にならなかった。
A君がいつものように練習にやってきた。
マネージャーにその事実を伝えられたA君は、一目でわかるほど落胆していた。
「A、ざ、残念だったな・・・。」
私のところにやってきたA君に、私は絞り出すように声をかけた。
チャレンジして受からないとかだったら、励ましようもある。
けれど、チャレンジすらできない悔しさは残念ながら経験していない私にはわからなかった・・・。
結局、A君はそれっきりボクシングを辞めてしまった・・・。
だから、今でもふと思い出し、あの時、私はなんて声を掛けるべきだったのかと考えてしまう・・・。